2010年度事業計画
Ⅰ.月刊誌『地域開発』の発行
 機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月に創刊以来継続して発行しており、2010年4月号は通巻547号となる。また2000年度に設置した編集委員会は11年目を迎え新たな気持ちで、幅広く充実した質の高い情報を、より広く提供するため、さらなる内容充実に努める。 昨年の政権交代につづく事業仕分けは国民の強い関心を呼んだが、地域振興・まちづくりには厳しい面も見え、地域政策にはどのような変化をもたらすのか。CO2の1990年比25%削減の環境政策、子供手当てなどは今後どのような展開を見せるのか。新政権の政策を注視しつつ、地域資源の活用、人材育成、地域間連携などにより生き残りをかけた地域の動きを捉え、国土計画・広域行政論、地域振興・地域間格差・地域産業振興・環境・景観問題、公民連携、諸外国の動向紹介などについて、多角的な視点からの企画編集をしていく 。
 ●『地域開発』編集方針
1)内容
地域振興に関連するテーマをもとに特集を組み、地域の自立と連携を促進する。また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う。
2)編集方法 編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで、企画を進める。
3)対象読者 地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。

●編集委員会の方針
  地域の自立と連携を支援する『地域開発』
●編集委員会
  委員長 (編集長) 大西 隆 (東京大学大学院教授、 当センター理事長)
委 員 関 満博 (一橋大学大学院教授、当センター理事)
委 員 矢作 弘 (大阪市立大学大学院教授、当センター理事)
委 員 大西達也 (日本政策投資銀行地域振興部課長)

Ⅱ.「地域開発研究懇談会」の開催
 地域開発についての会員形式セミナーである「地域開発研究懇談会」は、2009年度末で通算開催444回を数える。 2010年度においても、原則として年10回開催し、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員等に対し時宜を得た、有意義な情報を提供  していくように努めることとする。 このため、センター評議員・理事の方々の特段のご協力を仰ぐと共に、企画・運営の一層の充実を図っていくこととする。 また、賛助会員の方々を対象とした「地域政策講演会」も、タイムリーな現地見学を取り入れるなど、工夫を凝らして実施していくこととする。
Ⅲ.調 査・ 研 究
 当センターの調査・研究は、自主・受託業務を中心に、次のように推進する。
 1. 自主研究事業
1)2030年の東京都心市街地像研究会
   都市再生緊急整備地域の制度の経緯と充実を念頭におきつつ、政府が提唱する、低炭素化の中期目標年次2030年における東京都心部の将来像を作成する。
 将来像作成のねらいは、低炭素化、国際経済化、都市美化、高質な居住と文化、そして安心と安全の5点である。
 検討対象とする地域は概ね皇居を中心とし、東から隅田川、総武線・中央線そして南に向かって外苑東通りから田町駅にいたる輪郭線の内部と新宿駅周辺(副都心地区を含む)とする。
 具体的には、2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置し、研究を進めており、本市街地像の作成結果については、政府、地方自治体および企業群に対し、政策・制度の 創設・改善、新しい企業活動の新分野を提起していくこととする。
2)ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック表彰制度
   当センターの自主研究として実施してきた「環境と暮らしにやさしい住まいとまちづくり検討委員会」の成果を踏まえて、建物躯体とエネルギー設備機器をセットとして捉え、トータルとして省エネルギー性能の高い優秀な住宅を選定する「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」表彰制度を2007年度に創設し、昨年度も多数の住宅メーカーから応募をいただいたところである。
  本年度においても、本制度の主催・運営を通じ、住宅の省エネルギー、CO2排出等の削減推進を支援する。特に本制度の各地域への普及促進をはかり、地域における住宅の省エネルギー促進への貢献を目指す。

 2.受託予定調査事業業務
1)地方拠点都市地域整備支援事業
    1992年に地方拠点法が施行され、そのフォローとして各拠点都市地域が策定 した基本計画に基づく整備に関する支援を実施してきた。国土交通省からの受託は終了したが、計画を策定した自治体で構成する全国地方拠点都市地域整備推進協議会からの受託で、業務推進を行っている。本来の目的に加えて、広域行政 および地域経済振興に資する成果を生み出すよう支援していく。
2)国土政策関係研究支援事業
    本業務は、国土交通省の学官連携強化による国土計画推進事業の一環として 行うものであり、本年度で4回目となる。国土計画・国土政策等に関する調査・研究を行う若手研究者に対して、有意義かつ斬新な研究課題を広く公募し、審査の上、優秀と認められる研究企画案に対し研究委託の形式で研究助成を行うものであり、研究助成をする上での一切の管理運営(公募、選考委員会運営、研究委託、報告会開催、取りまとめ等)を行う。
3)日越交流事業支援業務
    経済発展の著しいベトナムでは、都市の開発や拡大が進行しているが、地方都市部に波及するには至っていない。本業務は、日越行政官交流事業後の具体的なプログラムであり、ベトナム国フートー省ベッチ市・奈良県橿原市間交流の最初のテーマとして保健医療協力を始めた。その交流を円滑に進むようにするのが、業務の内容である。交流内容としては、ベトナム人の日本での保健医療研修、ベッチ市への医療品支援、現地での保健プログラム実施等を予定している。 併せてベトナム他地域の地域開発、事業支援に貢献すべく業務拡大を進める。
4)既成市街地再開発調査
    都市再生機構と東京電力㈱から成る「既成市街地と都市基盤整備に関する研究会」を組織し、都市機能の向上とよりよい住宅の供給に資することを目的として、土地の高度利用とエネルギーの有効活用のあり方について検討する。
 本年度は、持続可能・循環型社会の実現に向けて、街づくりにおいては、地球温暖化対策やヒートアイランド対策が喫緊の課題とされており、省エネルギー、環境共生への取り組みが重要となっていることから、都市機能の向上とよりよい居住環境形成に資するべく、地球環境に配慮した都市基盤整備、エネルギー利用のあり方について検討を行う。
5)外苑東通り研究会
    本調査は、都市再生緊急整備地域内の未整備な主要幹線道路において、主要 幹線に相応しい街路整備を進めるための沿道市街地整備のあり方や課題について、昨年度までの成果に関する深堀り検討・研究を継続的に行うことを目的とする。
 具体的には、緊急整備地域「環状二号線新橋周辺、赤坂・六本木地域」の市街地整備において“軸”となりうる「外苑東通り沿道地域」を対象としつつ、当該沿道空間に関するあり方および実現方策の調査・研究を行うものである。
 昨年度は、地域関係者との意見交換を進め、外苑東通りとその周辺エリアに おける環境改善に向けた「エリアマネージメント方策の検討」と地元地域への 「アイデア発信ツール」を作成した。本年度は、これらを積極的に活用し、歩行者環境の高質化、歩行者回遊ネットワークの形成等について、地元組織等を啓蒙しながら検討を進め、将来的展開策を検討して行く。また、都市計画道路としての未整備状況については、あらためて関係機関に働きかけを行う。
6)景観まちづくりに関する意見交換会
    電気事業者は、「良好な景観の形成」に資する設備形成に積極的に寄与する よう、努めたいとの意向を有しており、かつ、それを実現できる力のある企業である。その際に、供給義務や料金負担の公平性など公益事業である電気事業の特性を考慮し、現実的な事業運営に大きな混乱が生じないように配慮することが一方において重要な課題となっている。ついては、幅広い専門的な知識と高い見識を有し社会的に大きな影響力を持つオピニオンリーダーの先生方と電気事業者幹部が、景観問題に関する自由で忌憚のない意見交換を通じて理解と認識を更に深め、良好な景観づくりに一層貢献する設備形成を推進していくことを目的とする。

 3.そ の 他
1.公益法人制度改革への対応
    2008年12月に公益法人制度改革3法が施行され、当センターは、5年間の移行期間内に、一般財団法人か公益財団法人に移行することが求められている。
 当センターの目的と内容を踏まえて、新法人への移行要件、移行後の事業活動や保有財産の規制など種々の観点を勘案したところ、国土開発関連の受託業務が全体の大部分を占めているという業務実態に鑑み、昨今の競争環境の中で安定かつ持続的に事業運営を行っていくため、より経営の自由度が高い一般財団法人に移行することとし、円滑な移行に向けて適切に対応していくこととする。


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