2016年度事業計画
Ⅰ.自主事業

当センターは、自主事業として、機関誌の発行および地域開発研究懇談会等を開催し、関係者をはじめ、広く社会に情報提供を行っていく。

1.機関誌(月刊『地域開発』)発行事業
機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月の創刊以来継続して発行してきており、2014年9月号は創刊50周年、通巻600号を迎えた。2015年度より本誌を取り巻く厳しい諸事情の中でも持続的な発行を維持するため、やむを得ない決断ではあるが、これまでの月刊(年12回)発行から隔月刊(年6回)に変更することとした。
そして2016年3月号で通巻612号となる。引き続き編集委員会を中心に、幅広く充実した質の高い情報をより広く提供するよう努めることとし、人口減少・少子高齢化社会や、東日本大震災からの復興への取組、揺れ動く国内外情勢など、社会の様々な動きの中で地域のニーズを捉えながら、国土政策、広域行政、防災国土づくり、コンパクトシティ、地方創生、地域連携、新たな研究報告の発掘等、多角的な視点からの企画編集を行う。
 ●『地域開発』編集方針
1)内容
地域振興に関連するテーマをもとに特集を組み、地域の自立と連携を促進する。
また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う。
2)編集方法 編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで企画を進める。加えて、外部有識者による新たな企画の発掘にも努める。
3)対象読者 地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。
●編集委員会
  委員長 (編集長) 大西達也(一般財団法人日本経済研究所調査局長)
委 員 瀬田史彦(東京大学大学院工学系研究科准教授)
委 員 岡部明子(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
委 員 松永桂子(大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授)
委 員 西川 智(一般財団法人日本地域開発センター総括研究理事)

2.「地域開発研究懇談会」等のセミナー事業
当センターの賛助会員を中心に、地域開発に関心の高い関係者を対象としたセミナー形式で開催している「地域開発研究懇談会」は、2015年度末で通算490回の開催を数える。
2016年度においても、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員及び一般の参加者に対し、時宜を得た有意義な情報を提供すべく開催する。このため当センターとして企画・運営の一層の充実を図るよう努める。具体的な講演内容としては、以下のような領域の中から、タイムリーかつ参加者の関心の高いテーマを設定する。
・中長期的視点に立った国土政策、地域政策
(少子高齢化・人口減少時代を見据えた国土ビジョン、国土・地域計画、地方創生、国家戦略特区、スマートシティ・コンパクトシティ、リニア新幹線と地域開発)
・大都市圏戦略(国際競争力と大都市圏整備、都市再開発)
・地方振興
(個性ある地域づくり、地方移住促進、中間支援組織支援、無居住化していく地方部における対応策、クラウドファンディングと地域経済振興)
・東日本大震災からの復興(コミュニティ、まちづくり、地域経済)
・防災国土づくり(安全安心な地域づくり、国土管理、インフラ整備の在り方)
・環境・エネルギーと国土(エネルギーインフラと国土、森林資源・海洋資源の活用)
・経済動向と地域(国際経済の潮流と地域活性化、東京と地方の経済格差問題)
・行財政システムと地域(道州制、大都市制度、地方分権、ふるさと納税)
・科学技術と地域振興(地域開発におけるビッグデータ・ITの活用可能性、大学と地域の連携)
  また、当センター役員等による賛助会員を対象とした「地域政策講演会」については、関心の高いテーマでの講演会や新たな開発施設等のタイムリーな現地見学会(「地域政策見学会」)など、会員のニーズに応える内容での実施に努める。2015年度は、前年度に引き続き「地域開発研究懇談会」と共催の形での講演会1回、現地見学会1~2回程度実施することとする。
3.地域開発に関する新たな研究会づくり
  地域開発、地域づくりに関する新たな調査研究テーマの開拓に向け、様々なチャンネルや機会を捉えて、地域活性化に質する方策についての研究会および地域創生の観点に立った住宅等の低炭素化・省エネの推進策についての研究会をつくり、幅広く検討を進める。
Ⅱ.調 査・ 研 究事業
1.多様な主体や地域間の連携・対流による持続可能な地域活性化のあり方に関する調査検討
  当センターは、長期にわたる「地域振興アドバイザー制度」の実施や様々な地域振興関係の受託調査研究業務を通じて、特に地方圏での地域づくりに関するノウハウの蓄積や人的ネットワークの形成を図ってきた。こうした蓄積を基礎に、2011年度から2014年度にかけて様々な調査を行い、その中から、地域の活性化に向けた方策として、「人材」、特に地域外の外部人材の活用の重要性、地域内での自律的な資金循環の仕組みづくり及びそのための中間支援組織等による連携・支援充実の必要性を明らかにしてきた。
また、近年のGIS環境の急速な進歩により、地域の諸課題をこれまでより容易に図示し分析することが可能となってきている。そこで2015年度は、様々な地域課題を各自治体レベルで担当者が分析するための支援ツールのあり方について検討を行った。さらに、府県を超えた広域行政のあり方についてのこれまでの論点の整理や今後の方向性についての検討を開始するとともに、半島地域での地域活性化方策についても検討を行った。
 2016年度は、こうした調査研究の実績と成果を踏まえ、地域の実情に応じた持続可能で暮らしやすく安全安心で活力ある地域づくり、共助社会づくりの実現に向け、多様な主体による連携や広域的な地域間連携・対流の促進による地域活性化のあり方や、府県を超えた広域制度などに関する調査検討に取り組む。
2.2040年+の東京都心市街地像研究会
   「2030年の東京都心市街地像研究会」においては、都市再生緊急整備地域制度の充実を念頭におきつつ、政府が提唱する、低炭素化の中期目標年次2030年における東京都心部の将来像を作成した。この将来像作成のねらいは、「低炭素化、国際経済化、都市美化、高質な居住と文化、そして安心と安全」の5点であった。
具体的には、2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置して研究を進め、都心3区を中心にコンパクトに絞ったエリアを対象に、民間開発ポテンシャル等も踏まえながら、「将来市街地像」をとりまとめた。これに引き続き、「シンボルプロジェクト(環2周辺、大手町、八重洲、江東、新宿)」また「地区別構想(品川、押上、臨海内陸部、江東、赤坂周辺、池袋」の検討を行い、加えて巨大都市における防災機能向上の観点から、備蓄機能を備えた分散かつ自立型の生活・生産拠点などについても検討の対象とした。さらに、2012年度からは、都心周辺地域の市街地像について、都心部との関連性に着目しつつ居住・産業・文化・景観・緑等様々な観点から検討を深め、住みたい東京のグランドデザイン等について最終的な取りまとめを行った。
2016年度は、これまでの成果も踏まえつつ、さらにその先の2040年を見越した将来ビジョンに関する新たな視点での検討に取り組む。
3.国土の将来ビジョンづくりに資する調査研究
   2008年に策定された我が国の国土計画である「国土形成計画(全国計画)」は、計画期間後半に入り、その間に様々な社会経済情勢の変化を経験してきた。少子高齢化による本格的な人口減少時代を迎えつつある中、東日本大震災等を契機として、将来の国土のありようについて議論を深め、安全安心で活力ある国土をいかにして作り維持していくかが改めて問われている。このため、国では長期的な視野に立った新たな国土の将来ビジョンづくりに着手し、2014年7月に「国土のグランドデザイン2050」を策定、2015年1月には「新たな国土形成計画(全国計画)中間整理」の取りまとめを行い、目下新しい国土形成計画の策定に向けた作業が引き続き進められている。
当センターにおいては、古くは日本列島の将来像や新全総策定に向けた提言を行うなど、国土計画との関わりを意識した調査研究を実施してきており、こうした経験を生かし、幅広い観点から国土を巡る諸課題について、新たな論点の掘り起こし、対応方策の検討などに取り組むことが重要である。このような観点から、2015年度は、人口減少に伴う問題やその背景、奥山地の国土管理のあり方等について基礎的な調査研究を行うとともに、道州制などの広域行政制度に関する有識者ヒアリングを中心とした基礎的検討調査や、地域を支える人づくり・共助社会づくりの事例収集を行った。2016年度は、引き続き広域行政制度に関する基礎的検討調査などに取り組む。
4.外苑東通り研究会
  本調査は、都市再生緊急整備地域内の未整備な主要幹線道路において、主要幹線に相応しい街路整備を進めるための沿道市街地整備のあり方や課題について、今日的社会経済状況や時間経過に伴う地域内の動向を視野に入れながら、前年度までの検討成果を継続的・発展的に検討・研究を行うことを目的とする。
具体的には、緊急整備地域「環状二号線新橋周辺、赤坂・六本木地域」の市街整備において“軸”となりうる「外苑東通り沿道地域」を対象としつつ、当該沿道環境に関するあり方及びその実現方策の調査・研究を行うものである。また、2020年に開催が決定した東京オリンピックを背景に、会場が集積する臨海部とリニューアルする国立競技場の中間に位置する六本木地区は、歴史的に国際性の豊かな繁華街であり、オリンピックを機に国内外の多くの人々の来訪が予想されるなど、課題改善の好機といえる。
2016年度も引き続き短期と中長期におけるアクションプログラムを検討し、その実現に向けた地元への提案などを行う。
5.「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」表彰事業
   本表彰事業は、「建物躯体とエネルギー設備機器を一体として捉え、トータルとしての省エネルギー性能」の評価を行い、優れた住宅を表彰することで、省エネルギーやCO2削減等へ貢献する住宅の普及と質的向上を促進することを目指し、2007年より「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」として実施してきた。2012年からは、設備機器をオール電化に限定せず「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」として行っており、2016年度もこの方針のもとに、継続して実施する。
6.災害に強い安全安心な国づくり、東日本大震災からの復興に向けた課題に関する調査研究
   喫緊の課題となっている南海トラフ巨大地震への対応については、事前対策の重要性が指摘されている。このため、2013年度にはモデル地域におけるデータ整備と分かりやすいビジュアル表現の工夫や、南海トラフ巨大地震被害想定域と東北地方の地域構造の比較について調査検討を行った。防災対策は、国民的関心が高く地域づくりへの影響が大きいテーマであり、2016年度においても、災害に強い国土づくり、安全安心なまちづくりに向けた調査研究に取り組むよう努める。
また、今般の震災復興への対応は、当センターが引き続き率先して取り組むべき課題である。2015年度は、東日本大震災の復興状況の経年的変化の把握のための実態調査を行ったが、2016年度も引き続き復興状況の定期的把握に向けての調査研究を行う。
7.日越交流事業の支援業務
   経済発展の著しいベトナムでは、都市の開発や拡大が進行しているが、地方都市部に波及するには至っておらず、これから都市問題が増加すると想定されている。本業務は、過去に実施した日越行政官交流事業を踏まえ、引き続き具体的な人材交流、経済交流を促進し、国際的な地域振興を推進しようとするものである。これまで、自治体国際化協会の助成も得て、ベトナム国フートー省ベッチ市と奈良県橿原市との交流事業として保健医療協力に取り組んできた。2013年度は、医療協力にむけて、地場の企業を含めた交流を行った。2014年度は、自治体職員の交流事業があり、側面的な支援を実施した。引き続き次年度も交流が予定されており、要望に応じた取組みを行う。また、今後は他地域での交流も促進し、更なる経済交流や地域事業支援へとつなげる業務に結びつけることを目指す。
8.環境・エネルギーと地域づくり・まちづくりに関する調査研究
   当センターは、これまで「ローカーボン地域づくり・まちづくり研究会」、「真庭市バイオマス産業杜市構想調査」など、環境・エネルギーシステムと地域づくり・まちづくりのノウハウの連携方策について調査研究を行ってきた。引き続き、こうした蓄積を活かしながら、環境・エネルギー分野と地域づくり・まちづくり分野を融合に向けた調査研究に取り組むよう努める。
9.その他
   国・地方自治体等が実施を予定している、各種調査・計画・企画事業業務の受託に積極的に取り組む。また、研究事業助成を行っている各種団体における地域振興に関する調査研究の獲得を目指す。

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