2014年7月号
通巻598号

特集 福岡都市圏特集:産学官民による新たな成長モデルの構築

 国レベルでの人口減少と高齢化が急速に進行していく中で、東京・首都圏を中心とした大都市圏にヒト・モノ・カネが集中する傾向が顕著となっている。これに対して、地方都市がその地位を維持し続けていくためには、国内だけでなく海外にも自らの存在感(価値・個性)を印象付けることで世界中から多様な人材や資本を呼び込み、地域の経済を牽引していく新たな産業を創出する必要がある。

 アジアと日本を結ぶ玄関口に位置しており、九州地域のビジネス拠点でもある福岡市では、歴史上もアジアとの密接な関係を構築することで国内外の交流拠点として発展を遂げてきた。近年も 2013年には市の人口が150万人を突破し、人口増加率2.1%(2010年10月国勢調査⇒2013年4月推計人口)も東京都特別区を含む政令指定都市の中で最大となっている。 その結果、通勤・通学を通じて福岡市と密接な関係を有する周辺8市8町を含めた福岡都市圏(広域行政圏)は、国内で最も勢いのある地域として認知されるようになっている。 また、2014年3月には安倍政権の経済政策・アベノミクスの三本目の矢である成長戦略の柱となる「国家戦略特区」の「創業特区」に選定されており、日本を牽引していく役割が期待されている。 福岡都市圏は、恵まれた生活環境から住民のみならず国内外の他地域からも「すみやすい都市」として評価されており、今後は世界中のビジネスマンや創業者から「ビジネスしやすい都市」として認知されることを目指している。そのために綿密な地域診断に基づく独自の成長目標の設定と成長戦略を構築(重点分野の選定と資源の集中的投入)すべく、2011年4月に産学官民からなる連携組織の福岡地域戦略推進協議会(Fukuoka D.C.通称FDC)を設立している。

 国内市場の拡大が望めない状況下で、福岡都市圏が成長を維持していくためには、行政、民間企業がそれぞれの立場で引き続き高い成長力が期待しうるアジアの需要を取り込んでいくことが重要 となる。FDCでは集客・交流や食などの重点産業と、資金調達、人材開発、まちづくりなどの経済基盤への資源の集中といった成長戦略の策定からその実施に至るまでを一貫して担うシンク&ドゥ・タンクとして、環境、観光、食、人材、都市再生の5部会での活動を中心に具体的なプロジェクトの創出に取り組んでいる点が特徴である。

 本特集では、全国に先駆けて産学官民一体による新たな地域成長モデルの構築を実践しつつある福岡都市圏について、FDCを取り巻く地元行政財界、大学、外部有識者などのさまざまな視点から、その取組の意義について検証を行いたい。

特集にあたって
大西 達也
Fukuoka D.C.が目指すもの
麻生  泰 Fukuoka D.C. 会長( 九州経済連合会 会長)
福岡都市圏の連携と発展に向けた新たな取組み
高島宗一郎 福岡市長
福岡都市圏の国際競争力強化に向けたシンク&ドゥ・タンクの試み
後藤 太一 福岡地域戦略推進協議会(FDC)事務局長
福岡版スマートシティ構想に向けて
─環境部会の活動 
安浦 寛人 国立大学法人九州大学理事副学長
「観光」:福岡都市圏のMICE戦略
高崎 繁行 公益財団法人福岡観光コンベンションビューロー/Meeting Place Fukuoka 企画運営委員会委員
「Food EXPO in FUKUOKA」開催により産業振興と集客交流拡大を実現─福岡・九州の重要産業「食」を通じて地域全体の経済成長を図る
中村 仁彦 福岡商工会議所専務理事
イノベーションスタジオ福岡─ 福岡型のイノベーション創出モデル構築をめざして
中村 英一 福岡市総務企画局長(福岡地域戦略推進協議会人材部会長)
「都市再生」:福岡都心再生戦略
橋田 紘一 福岡経済同友会 副代表幹事
地域経済の成長を促す新たな産業づくり
鍋山 徹 一般財団法人日本経済研究所 チーフエコノミスト
日蘭関係の発展を再び九州から! 福岡→九州、九州→日本全国、日本→アジアさらに欧州へ
ラーディンク・ファン・フォレンホーヴェン 駐日オランダ王国特命全権大使
◎<Infomation> 持続可能な都市開発のために
―ポスト2015開発アジェンダと「福岡モデル」
深澤 良信
◎<特別連載> 人口減少社会に求められる自治体の計画行政と計画技術 第5会
人口減少社会を見据えた都市計画マスタープランのあり方と計画技術
増田 勝・田所 寛
◎<研究報告>
定住自立圏構想と定住自立圏の設置の問題点(下)
森川 洋 広島大学名誉教授
◎<連載―第1回> 現場で活躍できる自治体職員の条件
―出る杭を伸ばすには
浦野 秀一
◎<地域紹介> 中山間地のくらし・生業の心
―道の駅・くちぶち小栗の里
佐藤 賢一

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