2020年秋号
通巻635号

特集 ウィズコロナ時代のニューノーマル社会の実現に向けて

中国・武漢から世界中に広がり、またたく間に蔓延した新型コロナウィルス(COVIT-19)は、止まる所を知らず今に至っている。コロナは、生命の危機だけでなく、経済の危機も招いている。感染を押さえつつ、経済を回していく知恵が求められており、Go To キャンペーンは、一定程度の地方への経済効果をもたらしているものの、感染を広げる危険性も孕んでいる。本号では、民間企業等によるウィズコロナ時代に対応した都市空間づくり、「新たな日常」の実現、地域づくりに関連した活動を中心に取り上げてみたい。
まず、国土交通省では、ニューノーマル社会に向けた本格的な検討をはじめている。ここでは、まちづくりの方向性として、都市(機能、生活)のあり方、都市交通、都市空間、技術対応、防災といった点から論点整理をしていただいた。次に、都市空間を創出している大手デベロッパーはどう考えているのか。三菱地所、三井不動産、森ビルからは、空間配慮について各社の見解を紹介していただいた。例えば、森ビルは、「ヒルズみんなのルール」という方針を定めており、イベント空間への試みとしては、東急不動産のリアル・オンライン融合イベントの事例を紹介いただいた。
地方では、青森で中止となった夏まつりイベントをオンラインで開催した試みが全国から注目され、一定の成果が得られている。さらに、地方移住専門のふるさと回帰支援センターでは、大都市で実施してきた都市住民と地方のマッチングイベントをオンラインイベントおよび個別の対面相談という組合せで実施した。こうした組織・団体の試行錯誤の取組みから、ウィズコロナ時代には、空間のありようだけでなく、各種イベントもリアルとオンラインの融合型にシフトしていく可能性を感じる。
コロナ禍が引き金となって、新たな地方移住や地方移転も起こり始めている。人材育成・開発に取組んでいるパソナグループでは、かねてより全国で地方創生にも関わってきたが、9月から本社機能の一部を淡路島に移転した。その実情や狙いをインタビューしたが、単なるリスク分散ではなく、新たな事業創造も狙っている。資生堂の九州への工場展開についても、受け入れ自治体では、同様の効果を狙っていることが伺える。
全国各地での取組みとして、環境に力をいれているニセコ町では、地方移住を受け入れるテレワークやワーケーションの受け入れ整備が進んでいる。既に、お茶製造販売会社のルピシアが本社移転を決めるなど、輝く地方には企業の地方移転を促す可能性があることを示している。地方での観光も、コロナを逆手にとってヘルスツーリズムに注力し、活路を見出す団体も出てくるなど、地域の価値を時代にあわせて磨き直すことで、新たな顧客層を開拓している。コロナだけでなく自然災害で疲弊した地域を活性化させるために(観光、情報)産業を支える人材が必要であり、これに対応する専門学校などの仕組みづくりも求められている。また、地域内での業務補完や人材融通も今後必要となるであろう。このように、本誌ではコロナを機に全国各地で生まれつつある、新たな生活様式を踏まえた地域独自の動きに注目していきたい。

 

■ウィズコロナ時代に対応した都市空間づくり
新型コロナがもたらす「ニューノーマル」に対応したまちづくり
国土交通省都市局
ポスト・コロナ時代のまちづくり
石川 直 三菱地所株式会社 コマーシャル不動産戦略企画部
官民連携による公園と商業施設一体型の新商業施設とウィズコロナ対応〜RAYARD MIYASHITA PARKにみる官民の役割
米持 理裕 三井不動産株式会社 商業施設本部アーバン事業部 事業推進グループ長
森ビルの考える都市の未来 「都市に求められるもの〜変わること・変わらないこと〜」
田中 敏行 森ビル株式会社 専門役員 都市開発本部計画企画部計画推進2部 兼 事業計画部部長
スマートシティ化を進める東京ポートシティ竹芝におけるリアル&オンラインの融合フェスティバル「TAKESHIBA SMARTCITY FES」の開催について
佐々木 祥 東急不動産株式会社 都市事業ユニット都市事業本部スマートシティ推進室
■コロナをきっかけとした地方移転・地方移住
インタビュー : 淡路島へ地方移転するパソナグループの新たな事業創造
渡辺 尚 株式会社パソナグループ 副社長 執行役員
コロナ禍での地方移住をめぐって〜オンライン化の課題と可能性
嵩 和雄 認定NPO法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター 副事務局長
地域の魅力、まちへの共感が人を呼び込む〜人口増加を続けるニセコ町のまちづくり〜
柏木 邦子 ニセコ町企画環境課 参事
資生堂の進出により注目される福岡県−久留米・うきは工業団地−
吉岡 慎一 元うきは市副市長
■新たな観光による地方創生
やってみるべし! ♯オンライン青森夏まつり
後藤 清安 NPO法人loveaomori project 代表理事
コロナだけど、コロナだから... 熱くなる津軽海峡交流圏〜交流圏民が進める地方創生〜
大西 達也 津軽海峡交流圏ラムダ作戦会議アドバイザー・『地域開発』編集長
ポストコロナ時代の観光と求められる観光事業者の事業継続力
高橋 充 株式会社南信州観光公社 代表取締役社長
『イデアITカレッジ阿蘇』専門学校の挑戦〜ポストコロナ社会にむけた南阿蘇ITバレー構想と官民連携推進協議会〜
井手 修身 学校法人(設立予定)イデア熊本アジア学園設立代表者、イデアパートナーズ株式会社 代表取締役
■コラム
コロナ禍における域内での業務補完
菅原 淳 株式会社北海道二十一世紀総合研究所
テレワークに取組む南予地域
坂本 世津夫 愛媛大学社会連携推進機構教授 地域協働センター南予副センター長
コロナ後の観光市場の変化について〜与論島の宿泊業、観光ガイドの視点から
佐藤 伸幸 日・中・英、3ヶ国語ガイド
◎エッセイ/ニューヨーク主夫通信その10(最終回)〜コロナウイルス禍の中のNY生活 その3
飯島 克如 一般財団法人日本地域開発センター客員研究員
裏表紙 生きる〜大町市
もったいないに価値を〜森の美容師をめざして
北澤 和也 やまさと林業

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