<地域振興の視点>
2002/09
 
■高速道路の作り方
編集委員・東京大学 大西  隆

 道路公団をはじめとする、道路4公団の民営化形態をめぐる論議が、政府に設けられた民営化推進委員会を主舞台に進んでいる。周知のように、日本の高速道路は、借入金で建設し、料金収入で返済するという償還主義をとり、かつ全高速道路を一つのネットワークとして扱い、同じ料金率を適用し、全料金収入で、全借入金を返済していくプール制をとっている。

 しかし、経営は順調ではない。本州四国間3橋を担当する本四公団は、料金収入が当初見込みを大幅に下回り、借入金の利息に満たない破綻状態にある。また、収支率((金利+管理費)/収入×100…小さいほど借入元金の返済に充てられる率が高い)では、道路公団は50%といまのところまずまずだが、首都高速で74%、阪神高速で93%となっていて苦しい。そして、道路公団についてみれば、最近の3年間では、総延長が8%増加したのに、通行台数は横這いであることも不安を掻き立てる。この結果、道路公団の意向も汲んでまとめられた様子が伺える公団の経営改善委員会報告書ですら、現行方式で借入金を返済できるのは、既完成路線+現整備計画路線(合計約9,300km)が限度であると指摘している。さらに、人口減少社会の到来で、高速道路の採算性は一層厳しくなるであろう。

 償還主義で建設しているのだから、償還できなくなるのであれば、建設を止めればよい。とくに赤字が想定される路線については、なおさら、建設を中止するべきだ、というのがこうした状況認識から出てくる答えである。しかし、難しいのは、多くの地方の自治体などが、それでも高速道路が欲しいといっていることである。新聞報道などを見る限り、守旧的な首長だけでなく、日ごろ開明的な言説を説いている多くの首長も、この問題では、「高速道路はもういらないというのは東京の論理だ」などと高速道路必要論を主張する。そこで、これまで通りの方法で高速道路が作れないならば、これまでとは違うやり方で高速道路を作ることはできないかという課題が浮かび上がる。といっても、道路整備の資金が新たに湧いてくるわけでないから、ほかでもなく、道路整備の税源を使って高速道路を作るのが新たなやり方である。つまり、毎年12兆円以上投じられる、道路特定財源+一般財源という税を源資とした道路整備費と、高速道路の料金収入を総合して、制度設計を行うのである。もちろん、高速道路に関する議論の背景に、償還できないような利用の少ない高速道路は建設するべきではないという投資効率論がある。そもそも少子高齢化の人口減少社会に間もなく突入するのであるから道路を含めた公共事業の量的水準は根本的に見直して縮小するべきだという公共事業=道路事業縮小論も制度に生かさなければならない。
 つまり、足りないところは税金で補えばいいという単純な税金依存は成り立たない。高速道路利用者による料金負担という仕組みは維持しつつ、自治体が、高速道路を作るか、一般道路を作るか、それとも道路に充てられてきた財源を他の用途に向けるかを選択できるような制度改革を行うことが必要である。道路公団に焦点をあてた改革の内容は以下である。

(1) 高速道路は国が、一般道路は地方が整備に当たる。高速道路が整備されるにつれ、長距離交通は高速道路、短距離交通やインターチェンジへのアクセスは一般道路を使うというパターンが定着してきた。高速道路は、特別な道路、贅沢な道路というイメージではなく、国道という名前に相応しい全国的なネットワークになってきた。したがって、この際、高速道路網を国道とし、一般道路は、整備と管理の責任と財源を地方に移譲し、都道府県道や市町村道とする。

(2) 高速道路に投入する特定財源を増額するとともに、採算性の評価を厳格に行う。道路ネットワークに占める高速道路のウエイトが高くなるにつれ、高速道路利用者にとっては揮発油税をはじめとする自動車関係税が特定財源=利用者負担金という性格を持ちながら、自分の使う高速道路には十分に投入されないという不満が生じている。この点を根拠に、高速道路の整備に投入する特定財源を増やし、高速道路が料金収入+特定財源によって作られるようにする。その上で、整備するのはプール制によって償還可能な範囲に留め、それに含まれない不採算路線の建設は地元の負担によって行う。恐らくプール制に含まれる路線は全国で9,000から1万キロ程度になると見られるが、そこからはみ出る不採算路線が計画されている地域では、一般道路でも十分に高速走行ができる可能性のある地域でもあるから、高速道路の建設については、自治体の負担と判断にまかせる。

(3) 高速道路に回す分を除いた道路特定財源は地方に移管し、移動目的を直接、間接に満たす広い用途に充当し、自動車交通の抑制も狙いとする。道路特定財源の目的は、単に道路整備ではなく、自動車交通のもたらす温室効果ガスの排出、大気汚染、騒音振動、混雑、交通事故などを看過せず、積極的にその削減を図ることになる。具体的には、歩道・自転車道・緑道の整備、公共交通機関の整備・拡充、情報通信手段の充実による交通との代替効果や補完効果の発揮、燃料電池自動車など低公害自動車の開発・普及、沿道の拡幅や緑化による自動車公害の削減、適切な土地利用政策による自動車交通の抑制など多様な手段が道路特定財源による事業の対象となりうる。そして、法律によって定められる道路特定財源を管理する国の役割は、整備に当たる地方がこれらの事業を適切に実施して、自動車のもたらす諸問題を解決しつつ、移動にこめられた目的を達成しているかをチェックすることにある。

(4) このように使途を広げることによって自動車関係税が環境税としての機能を果たすことになるから、自動車交通を抑制し得るような税率が適用されていることが望ましいことになる。したがって、現在の道路特定財源の税率を下げるべきではないだろう。もちろん、現行法の改正に際しては十分な合意形成が不可欠であるが、交通が温室効果ガス対策の主戦場であり、道路公害軽減が焦眉の急であり、交通混雑が日本の都市問題の積年の解決課題であることを踏まえるならば、十分に合意が形成され得る問題であると思う。そして、情報通信も交通と代替的、補完的な関係を重視して位置付けられることによって、より市民生活に有用な技術やインフラとして定着していくのではないだろうか。

(おおにし・たかし)


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