第428回 地域開発研究懇談会(2008年08月)

「国際観光地マーケティングの実践」

講 師 廻 洋子 氏
     淑徳大学国際コミュニケーション学部教授

日 時 2008年8月29日(金)15時〜17時

会 場 霞が関コモンゲート ナレッジスクエア・スタジオ

 ビジット・ジャパン・キャンペーンが始動してから5年が経過した。2010年までにインバウンド(訪日外国人旅行者)数を1千万人にとする目標を国は打ち出したが、来年度には達成しそうな勢いであり、この実態は、一部の観光地の様子を見るだけでも体感できるであろう。インバウンド観光への取り組みは、各地にどの様なチャンスと変化をもたらしているのであろうか。また、インバウンド観光に対応するために必要な地域施策・企業施策とはどの様なものであろうか。国際的なリゾート開発に通じた廻洋子氏にお話をいただいた。

■内容
1.今、なぜ、観光なのか
● 背景
明治・大正時代から第二次大戦後まで観光は日本の国家政策であったが、高度成長の産業政策で観光の意義が薄れた。90年代の不況の時代になると、産業構造の変化、少子高齢化、歳入減少、地域経済の低迷、地域格差の拡大が進み、その解のひとつとしての観光に再び注目が集まるようになった。一方人生80年の時代になり、生涯時間70万時間のうち余暇時間は30%という余暇社会の進展も観光を後押しした。
● 観光の効果
観光の経済効果、社会効果は大きい。
観光は国のソフトパワーを強化し、草の根交流は国家間の外交を補完する大きな役割を果たし、しいては安全保障に大きく貢献する。少子高齢化時代にあって、交流人口を拡大し、需要の創出することができる観光は経済の活性化の切り札になる。特に疲弊する地方においては、観光は地域活性化の新しいアプローチになり、また地域のアイデンティティを確立し、地域の文化を振興する役割も果たす。観光の日本経済への貢献度は非常に高く、また多くの雇用も創出する。
● 新たな時代へ
2003年には観光立国懇談会開催され、ビジットキャンペーンがスタートし、2007年1月には観光立国推進基本法が施行され、観光立国推進基本計画も策定された。2008年10月には観光庁も創設され、観光立国はいよいよ本格的に始動する。

2.観光立国推進基本計画
● 5つの基本的な目標は、
訪日外国人旅行者数を2010年までに、1000万人、日本人海外旅行者を2000万人、国内観光旅行の消費額を30兆円(2005年度24.4兆円)、国内旅行宿泊数を4泊/人(2006年度 2.77泊)、国際会議開催件数 5割増(2005年:168件)
●  4つの施策の柱
国際観光の振興、国際競争力の高い魅力ある観光地の形成、観光旅行の促進のための環境の整備、観光産業の国際競争力の強化及び観光の振興に寄与する人材の育成

3.観光動向
● アジアの大躍進
世界の観光需要は飛躍的に増加しており、なかでもアジア観光はアウトバウンド、インバウンドの両面で大躍進をしている。アジア各国では、国際拠点空港・港湾の整備・拡充が着実に進展している。我が国では、VJC(ビジット・ジャパン・キャンペーン)等によりアジアからの旅行者を中心として訪日外国人は増加傾向であるが、日本からのアウトバウンドは低迷を続けている。アジア諸国は日本にとって、巨大な観光潜在市場あると同時に、日本にとって、インバウンド観光のコンペティターである
● 日本人市場は縮小へ
少子高齢化、生活環境の変化経済・雇用状況の変化、流通の変化、情報化の進行など、日本の観光を取り巻く環境は大きく変化している。
今後旅行市場は縮小に向うと考えられ、旅行市場も世代交代とともに大きく変わってきている。今後はアウトバウンドや国内旅行野の大きな発展は望めないため、インバウンドに力を注ぐ必要がある。

4.地方自治体の国際観光振興
● 重要なマーケティングの視点
需要側に立ったマーケットインの視点に切り替える必要。観光地をひとつのサービス商品として、小さなテーマパークのように捉え、そこに誘客するための戦略を練る。
そのためには観光地の価値を精査し、観光地のコンセプトを作ることが必要である。コンセプトは自治体、観光関連業者、住民にいたるまでに浸透させ、共有する必要がある。すべてのプロモーション活動はこのコンセプトに沿って行う。
観光プロモーションには、Convergence(集中)、Continuity(継続)、Continuity(継続の
3つのCが重要である。
コンセプトを勘案した上で誘客圏、ターゲットを設定し、交通機関の利便向上、標識、情報などの受け入れ体制を整える。

5.観光地を成功に導く9つのポイント
(1)観光地のコンセプトが明確であること
(2)規模が適切であること 
(3)長期的視野に立った観光地づくりをしていること
(4)優れたリーダーの存在
(5)交通アクセス・ネットワークが整備されていること、魅力的な宿泊施設があること
(6)ある程度の大きさのある市場を有していること
(7)季節を通じで集客できること
(8)昼と夜も楽しめること
(9)住民が観光事業に協力的でありホスピタリティがあること

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