機関誌月刊『地域開発』は、1964年10月の創刊以来継続して発行してきており、2020年2月で通巻632号となった。2018年度からは、季刊(年4回)に変更し、持続的な発行を維持してきたところである。
編集委員会を中心に、引き続き幅広く充実した質の高い情報をより広く提供するよう努めることとし、人口減少・少子高齢化社会や東日本大震災からの復興への取組、揺れ動く国内外情勢など、社会の様々な動きの中で地域のニーズを捉えながら、国土政策、広域行政、防災国土づくり、コンパクトシティ、地方創生、地域連携、新たな研究報告の発掘等、多角的な視点からの企画編集を行う。
なお、諸般の事情から、今年度をもって、機関誌の発行を休止することとする。
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●『地域開発』編集方針 |
1)内容
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地域振興に関連するテーマを中心に特集を組み、地域の自立と連携を支援、促進する。また、広く内外在住の研究者、実務家に寄稿依頼するとともに、問題を深化するため、独自の調査研究を行う。 |
2)編集方法 |
編集委員会において、上記に関する議論を行い、担当編集委員のもとで企画を進める。加えて、外部有識者による新たな企画の発掘にも努める。 |
3)対象読者 |
地域経済人、地方自治体職員、市民団体、地域問題政策担当者・研究者・実務家など。 |
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●編集委員会 |
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委員長 (編集長) |
大西達也(一般財団法人日本経済研究所 常務理事・地域未来研究センター長・調査局長) |
委 員 |
瀬田史彦(東京大学大学院工学系研究科准教授) |
委 員 |
岡部明子(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授) |
委 員 |
松永桂子(大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授) |
委 員 |
金子 健(一般財団法人日本地域開発センター総括研究理事) |
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2.「地域開発研究懇談会」等のセミナー事業 |
当センターの賛助会員を中心に、地域開発に関心の高い関係者を対象としたセミナー形式で開催している「地域開発研究懇談会」は、2019年度末で通算503回の開催を数える。
2020年度においても、都市・地域に関わる一層幅広い分野からテーマや講師を選び、会員及び一般の参加者に対し、時宜を得た有意義な情報を提供すべく開催する。このため当センターとして企画・運営の一層の充実を図るよう努める。具体的な講演内容としては、以下のような領域の中から、タイムリーかつ参加者の関心の高いテーマを設定する。
・中長期的視点に立った国土政策、地域政策(少子高齢化・人口減少時代を見据えた国土ビジョン、国土・地域計画、地方創生、国家戦略特区、スマートシティ・コンパクトシティ、リニア新幹線と地域開発) |
・大都市圏戦略(国際競争力と大都市圏整備、都市再生) |
・地方振興(個性ある地域づくり、地方移住促進、中間支援組織支援、無居住化していく地方部における対応策、クラウドファンディングと地域経済振興) |
・東日本大震災からの復興(コミュニティ、まちづくり、地域経済) |
・防災国土づくり(安全安心な地域づくり、国土管理、インフラ整備のあり方) |
・環境・エネルギーと国土(エネルギーインフラと国土、森林資源・海洋資源の活用) |
・経済動向と地域(国際経済の潮流と地域活性化、東京と地方の経済格差問題) |
・行財政システムと地域(道州制、大都市制度、地方分権、ふるさと納税) |
・科学技術と地域振興(地域開発におけるビッグデータ・ITの活用可能性、大学と地域の連携) |
2020年度は、数回の開催を予定している。さらに、新規開発施設等のタイムリーな現地見学会(「地域政策見学会」)についても従来同様開催することとしている。 |
3.「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」表彰事業 |
本表彰事業は、「建物躯体とエネルギー設備機器を一体として捉え、トータルとしての省エネルギー性能」の評価を行い、優れた住宅を表彰することで、省エネルギーやCO2削減等へ貢献する住宅の普及と質的向上を促進することを目指している。本事業は、民間主導の特色ある表彰制度であり、2007年より「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エレクトリック」として実施し、2012年からは、設備機器をオール電化に限定せず「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」として行ってきた。2020年度もこの方針のもとに、第13回として継続して実施する。
(参考)応募件数:2012年 87件、2018年 285件、2019年 347件
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4.地域開発に関する新たな研究会づくり |
当センターの調査・研究は、自主・受託業務を中心に、以下のように推進する。
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Ⅱ.調 査・ 研 究事業 |
1.多様な主体や地域間の連携・対流による持続可能な地域活性化のあり方に関する調査検討 |
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当センターは、長期にわたる「地域振興アドバイザー制度」の実施や様々な地域振興関係の受託調査研究業務を通じて、特に地方圏での地域づくりに関するノウハウの蓄積や人的ネットワークの形成を図ってきた。こうした蓄積を基礎に、2011年度から2018年度にかけて様々な調査を行い、その中から、地域の活性化に向けた方策として、「人材」、特に地域外の外部人材の活用の重要性、地域内での自律的な資金循環の仕組みづくり及びそのための中間支援組織等による連携・支援充実の必要性を明らかにしてきた。
2019年度は、世界自然遺産に推薦されている奄美群島における、世界自然遺産登録がなされた場合の来訪者の定量的な流動シナリオの作成、及び「奄美群島成長戦略プロジェクト推進会議」とその下に設けられた「受入体制整備」、「戦略的な情報発信」の2つのワーキンググループの運営を主として行った。
2020年度は、こうした調査研究の実績と成果を踏まえ、地域の実情に応じた持続可能で暮らしやすく安全安心で活力ある地域づくり、共助社会づくりの実現に向け、多様な主体による連携や広域的な地域間連携・対流の促進による地域活性化のあり方や、府県を超えた広域連携などに関する調査検討に取り組む。
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2.2040年+の東京都心市街地像研究会 |
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「2030年の東京都心市街地像研究会」においては、都市再生緊急整備地域制度の充実を念頭におきつつ、政府が提唱する、低炭素化の中期目標年次2030年における東京都心部の将来像を作成した。この将来像作成のねらいは、「低炭素化、国際経済化、都市美化、高質な居住と文化、そして安心と安全」の5点であった。
具体的には、2008年10月、当センター内に賛助会員などの参加企業による「2030年の東京都心市街地像研究会」を設置して研究を進め、都心3区を中心にコンパクトに絞ったエリアを対象に、民間開発ポテンシャル等も踏まえながら、「将来市街地像」をとりまとめた。これに引き続き、「シンボルプロジェクト(環2周辺、大手町、八重洲、江東、新宿)」また「地区別構想(品川、押上、臨海内陸部、江東、赤坂周辺、池袋」の検討を行い、加えて巨大都市における防災機能向上の観点から、備蓄機能を備えた分散かつ自立型の生活・生産拠点などについても検討の対象とした。さらに、2012年度からは、都心周辺地域の市街地像について、都心部との関連性に着目しつつ居住・産業・文化・景観・緑等様々な観点から検討を深め、住みたい東京のグランドデザイン等について最終的な取りまとめを行った。
2015年からは、「2040年+の東京都心市街地像研究会」として、これまでの成果も踏まえつつ、さらにその先の2040年を見越した将来ビジョンに関する新たな視点での検討を行い、高齢化する東京の今後の都市計画の4つの戦略(「国際競争力」、「安全・環境」、「品格・居住」、「歴史・文化」)と11の戦術からなる具体的な提案を東京計画図案集としてとりまとめた。
2018−19年度は、東京の国際競争力が東京区部だけでなく東京圏全体の都市機能や人口集積が根源となっていることを踏まえて、区部から検討のスコープを広げて東京圏全体を俯瞰した将来展望を取りまとめ、必要となる政策・制度提案を行うこととし、検討を進めているところである。2020年度も継続して取り組んでいく。
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3.国土の将来ビジョンづくりに資する調査研究 |
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2008年に策定された我が国の国土計画である「国土形成計画(全国計画)」は、計画期間後半に入り、その間に様々な社会経済情勢の変化を経験してきた。少子高齢化による本格的な人口減少時代を迎え、東日本大震災等を契機として、将来の国土のありようについて議論を深め、安全安心で活力ある国土をいかにして作り維持していくかが改めて問われている。このため、国では、2015年8月に「第二次国土形成計画(全国計画)」が策定され、2019年度からは、人口減少の進行、急速な高齢化等を踏まえた国土の長期展望の検討が開始されたところである。
当センターにおいては、古くは日本列島の将来像や新全総策定に向けた提言を行うなど、国土計画との関わりを意識した調査研究を実施してきており、近年は北前船等の歴史的蓄積を背景とする広域的な交流に関する調査研究、既存の都道府県域を超えた自治体連携などの広域行政に関する検討調査等を実施してきた。こうした経験を生かし、2020年度においても、幅広い観点から国土を巡る諸課題について、新たな論点の掘り起こし、対応方策の検討などに取り組むよう努める。
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4.東日本大震災の復興状況の実態調査 |
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防災対策は、国民的関心が高く地域づくりへの影響が大きいテーマであり、当センターとしても率先して取り組むべき課題である。このため2011年以来東日本大震災の復興状況の経年的変化の把握のための実態調査等を継続に行っており、2020年度も引き続き復興状況の定期的把握に向けての調査研究等を行う。
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5.アジア諸国の国土・地域計画、社会資本整備の現状・課題に関する調査研究 |
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我が国は他のアジア諸国と海により隔絶されていながらも戦前、戦後に亘り相互に影響力を及ぼし合いながら共に発展してきた。この結果、我が国を含めた東アジア地域は今や世界経済の将来を導くといっても過言ではない地域として注目される様になっており、この過程にあって我が国はアジア諸国の社会基盤整備に一定の影響力を及ぼしてきたという歴史がある。
一方、人口減少社会を迎える中、我が国の経済を成長させ、また国際社会の中で存在感を発揮するためには、産業の国際力を強化するとともに、国際物流構造の改善や観光などによる国際的な人的交流基盤の整備が必要であり、アジア諸国と我が国の社会基盤との一層的確な連携が不可欠である。
このため、近隣国についての国土・地域計画、社会資本整備の現状・課題に関する調査・研究を2020年度も引き続き行う。
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6.環境・エネルギーと地域づくり・まちづくりに関する調査研究 |
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当センターは、これまで「ローカーボン地域づくり・まちづくり研究会」、「真庭市バイオマス産業杜市構想調査」など、環境・エネルギーシステムと地域づくり・まちづくりのノウハウの連携方策について調査研究を行ってきた。
2019年度では、真庭市バイオマス産業杜市構想の中間見直しを行ったが、引き続き、こうした蓄積を活かしながら、環境・エネルギー分野と地域づくり・まちづくり分野を融合に向けた調査研究に取り組むよう努める。
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